ゲストスピーチ「京都市の林業の現状」

花脊造林組合組合長  谷口 忠武
弁護士・㈱八木木材市場代表取締役社長

演題を「京都市の林業の現状」としましたが、本日お話しすることは、京都市に限ったことではなく、全国的に共通の状況にあります。


京都市に於ける森林率は約72%、人工林率は約40%になります。農地、住居地、河川その他の森林以外の土地すべてを合わせても28%にしかなりません。 森林の内約40%が人工林化しています。これはそのほとんどが、戦後の木材需要に備えて、昭和35年をピークとして植林された杉、桧、落葉松などの一斉造林なのです。国土の大部分を占める森林の役割について、国民はどのような期待をしているのかということの調査結果が発表されています。(総理府「森林・林業に関する世論調査」)
1980年、1999年、2015年の数字を拾い上げてレジュメに紹介しておきました。それぞれに時代背景が読み取れ、おもしろいのでご覧ください。

年度にかかわらず「治山治水機能」が第1位を堅持しています。第1次産業の一翼を担うはずの林業(木材生産機能)は、1980年は堂々の第2位、1999年は最下位の第9位、2015年にはやや復活して第4位と大きな変動を見せています。この順位変動は、林業の盛衰をそのまま表しています。ただ、2015年の第4位というのは、林業が復活してきたのではなく、政府がこのままでは第1位から第3位を占める「治山治水機能」「二酸化炭素吸収機能」「水資源涵養機能」のいずれについても重大な懸念が生じることに気づき、遅まきながら森林組合を間伐事業体に育て、林業、木材業のキャンペーンを行っていることの結果だと思います。

日本の林業は、30年ほど前からの木材価格の下落に伴い、全く採算のとれない産業になってしましました。その結果、廃業が相次ぎ、林家は消滅したといっても良いような状態になっています。ここに林業は滅びてしまいました。本来、林家のない林業なんてあり得ないと考えるからです。

林家が亡くなった結果、林家が営々として植林し、守り育ててきた人工林は、放置され、荒れ果てるところが多発しています。国土の30~40%を占める人工林が荒れ果てるということは大変なことです。
放置された人工林を健全な山林に回復するためには、急いで間伐を実行しなければなりません。
国も、遅きに失してはいますが、
躍起になって間伐対策を講じているのです。

自然環境保全のためには、森林には出来るだけ人工の手をいれことがよいといわれたことがあります。
これは、天然林については当てはまるとしても、人工林については全く当てはまりません。
人工林を放置すると、確実に自然環境破壊の元凶になります。
日本の林業は、大変な状況にあります。
この厳しい環境の中でも、先祖から受け継いだ山林を必死で守り続けている人もいます。

お願いしたいことは、森林林業の果たす役割を知り、これを守る人に敬意を払い、愛情を持って内地材の利用を心がけていただきたいことです。
その結果少しずつでも林業に明るい兆しが見えるようになれば、とてもうれしいことです。